不動産投資を行っていると、トラブルは避けて通れません。滞納、騒音、漏水、そして立ち退き……。 多くの大家さんはこれらを「損失(コスト)」や「ストレス」と捉え、できるだけ避けようとします。
しかし、弁護士として、そして一人の投資家として断言します。 **「不動産投資における超過利潤(平均以上の利益)は、トラブル解決の対価である」**と。
誰もが嫌がるトラブルの中にこそ、実は大きな利益の種が眠っています。今回は、法的思考(リーガルマインド)と投資家視点を掛け合わせた「トラブルを利益に変える発想」を共有します。
1. 「法的瑕疵」を仕入れ、正常化して売る(仕入れの利益)
最も大きな利益を生むのは、「入り口(購入)」時点でのトラブルです。
一般の投資家は、権利関係が複雑な物件(共有持分の争い、境界未確定、立ち退きが必要な居抜き物件など)を極端に嫌います。そのため、こうした物件は相場より大幅に安く、時には半値以下で放置されています。
ここに「解決力」を投入することで、莫大な利益が生まれます。
- 境界紛争: 筆界特定制度やADR(裁判外紛争解決手続)を活用し、境界を確定させてから売却する。
- 占有屋・滞納者: 法的・実務的に適切なステップで明渡しを完了させ、リノベーションして再販・再賃貸する。
弁護士大家としては、**「トラブル=リスク」ではなく、「トラブル=解決可能なタスク」**と捉えます。タスクをこなすだけで資産価値が倍増するのであれば、これほど美味しい仕事はありません。
2. クレーム対応を「長期入居」への投資に変える(運営の利益)
運営中のトラブル、特に設備故障や騒音問題などの入居者クレームは、対応次第で「利益」に変わります。
多くの大家さんは「修繕費がかかる」「電話が面倒だ」と考えがちですが、私はこう考えます。 **「トラブル発生時は、入居者との信頼関係(ラポール)を築く最大のチャンスである」**と。
具体的なアクション
- 即座のレスポンス: エアコンが壊れた際、安さよりも「速さ」を優先して新品に交換する。
- プラスアルファの提案: 単に直すだけでなく、「ご不便をおかけしたお詫びに、浴室の水栓も最新のサーモスタット式に変えておきますね」と提案する。
この対応により、入居者は「この大家さんは自分を大切にしてくれる」と感じます。結果として、退去率が下がり、空室損が減り、LTV(顧客生涯価値)が最大化します。トラブル対応費は、広告宣伝費よりも遥かに効率の良い「優良入居者維持コスト」なのです。
3. 「立ち退き・退去」を賃料リセットの好機とする(出口の利益)
最もストレスフルな「契約解除」や「立ち退き交渉」も、視点を変えればチャンスです。
長期間入居している部屋は、賃料が相場より安くなっているケースが多々あります(レントギャップ)。 法的トラブルや契約違反による解除、あるいは正当事由に基づく立ち退き交渉は、一見すると弁護士費用や労力の無駄に見えます。
しかし、空室になった瞬間に以下のことが可能になります。
- フルリノベーションによるバリューアップ
- 相場賃料(あるいはそれ以上)への再設定
- 敷金・礼金のリセット
特に古いアパートでは、「トラブルによる退去」こそが、物件の新陳代謝を強制的に進めるトリガーとなります。 私は、滞納等のトラブルが発生した際、感情的に怒ることはありません。「これでやっと、低家賃の部屋を現代のニーズに合わせて再生できる」と、事業的な計算機を叩き始めます。
結論:トラブル解決力こそが大家の実力値
不動産賃貸業は、単なる不労所得ではありません。 「空間」というハードウェアと、「法律・人間関係」というソフトウェアを調整して価値を生む事業です。
平穏無事な時は誰でも大家ができます。しかし、トラブルが起きた時こそ、あなたの「経営者としての手腕」が試され、そこで他者と差別化された利益が生まれます。
トラブルから逃げず、真正面から「どうすればこれを資産価値向上につなげられるか?」を考えてみてください。その発想の転換ができた時、あなたは一歩先のステージに進んでいるはずです。


