【記事執筆・監修】弁護士町田北斗(東京弁護士会)
法的知識(リーガル・リテラシー)が充分でないために、取り返しのつかない失敗する人が多くみてきました。
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交通事故の被害に遭ったとき、あなたの行動一つで、受け取れるはずの賠償金が半分以下になったり、治療費が自己負担になってしまう残酷な現実があります。ここでは、被害者が陥りがちな「10の失敗」を、事故直後・治療中・示談交渉の3つのフェーズに分けて解説します。
失敗1:警察を呼ばず、その場で「口約束の示談」をしてしまう
▼ 失敗実例:「少しぶつかっただけだし、相手も急いでいるみたいだから『修理代だけ払います』という連絡先交換だけで済ませてしまった」 💡 弁護士の防衛術: 警察への報告は道路交通法上の「義務」です。警察を呼んで「交通事故証明書」を発行してもらわなければ、後から痛みが出ても保険金を請求できなくなります。どんなに軽微な事故でも、必ずその場で110番通報してください。
失敗2:目立った外傷や痛みがないため、すぐに病院に行かない ▼ 失敗実例:「事故当日は興奮していて痛みを感じず、仕事も休めないので放置。1週間後に首が激しく痛み出してから病院に行った」 💡 弁護士の防衛術: むち打ちなどの症状は、数日後に現れることが多々あります。しかし、事故から数日以上経過して初診を受けると、保険会社から「その痛みは本当に事故のせいですか?」と因果関係を疑われ、治療費が支払われないリスクが跳ね上がります。事故当日から遅くとも翌日には、必ず「整形外科」を受診してください。
失敗3:「物損事故」のまま処理し、「人身事故」への切り替えを忘れる ▼ 失敗実例:「相手の点数が引かれるのが可哀想で、警察には物損事故として届け出たまま、病院に通院している」 💡 弁護士の防衛術: ケガをしているのに物損事故のままにしておくと、実況見分調書(事故の詳細な記録)が作成されません。後日、相手が「そんなに激しくぶつかっていない(過失割合の争い)」と言い出した際に、有力な証拠がない状態になります。診断書を取得したら、速やかに警察へ提出し「人身事故」へ切り替えてください。
失敗4:気が動転して、その場で「自分が悪かったです」と念書を書いてしまう ▼ 失敗実例:「相手が強面で怒鳴ってきたため、パニックになり『こちらの不注意でした、全額賠償します』というメモにサインしてしまった」 💡 弁護士の防衛術: 事故直後の混乱状態で、過失割合(どちらがどれくらい悪いか)について安易に発言したり、書面を残すのは絶対にNGです。「申し訳ない」という道義的な謝罪と、法的な「100%の賠償責任を認めること」は全く別物です。現場では事実確認と警察への連絡に留めましょう。
失敗5:整形外科(医師)ではなく、いきなり整骨院・接骨院に通い始める ▼ 失敗実例:「近所にあって夜遅くまで開いている整骨院(柔道整復師)にだけ通い続けていた」 💡 弁護士の防衛術: 法律上、「診断」を下せるのは医師(整形外科などの病院)だけです。後遺障害が残った際に必須となる「後遺障害診断書」は、医師しか作成できません。整骨院に通うこと自体は問題ありませんが、必ず「まずは整形外科を受診」し、「医師の許可を得てから整骨院と併用」し、月に数回は整形外科での診察を継続するのが鉄則です。
失敗6:保険会社の「そろそろ治療費を打ち切ります」に素直に従う ▼ 失敗実例:「事故から3ヶ月後、相手の保険会社から『目安の期間を過ぎたので来月で治療費の支払いを終了します』と言われ、まだ痛いのに通院をやめてしまった」 💡 弁護士の防衛術: 保険会社の担当者は医療の専門家ではなく、あくまで自社の支出を抑えるための交渉として打診してきています。治療を終了するかどうか(症状固定の時期)を決めるのは、保険会社ではなく「主治医」です。主治医が「まだ治療が必要」と判断しているなら、安易に打ち切りに同意せず、延長交渉を行うべきです。
失敗7:痛みを我慢して通院頻度を減らしてしまう ▼ 失敗実例:「仕事が忙しく、月に1〜2回しか病院に行けなかった」 💡 弁護士の防衛術: 慰謝料の金額や、後遺障害の認定において「通院実績(頻度)」は極めて重要です。通院日数が少なすぎると、裁判所や保険会社に「大したケガではなかった(治っていた)」と判断され、適切な賠償を受けられなくなります。
失敗8:保険会社から提示された「示談金」に、そのままハンコを押す ▼ 失敗実例:「保険会社から丁寧な書面で『これが規定の満額です』と言われ、そういうものかと思ってサインした」 💡 弁護士の防衛術: これが最も多く、最も被害額が大きくなる致命的な失敗です。 保険会社が提示するのは、自社の支払いを抑えるための「任意保険基準」です。これに対し、過去の裁判例に基づいた正当な「裁判基準(弁護士基準)」で計算し直すと、慰謝料が2倍〜3倍に跳ね上がるケースが多々あります。絶対に即答でサインせず、まずは弁護士に妥当性を確認してください。
失敗9:保険の「弁護士費用特約」を使い忘れる(または出し惜しみする) ▼ 失敗実例:「弁護士に頼むと大げさだし、自分の保険を使うと等級が下がって保険料が上がると思って使わなかった」 💡 弁護士の防衛術: ご自身やご家族の自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯している場合、実質的な自己負担ゼロ(多くは300万円まで)で弁護士に交渉を依頼できます。しかも、この特約を使っても等級は下がらず、翌年の保険料も上がりません。 使わなければ完全に「損」をするだけの特約です。
失敗10:自分で全て交渉しようとして、精神的に疲弊し妥協する ▼ 失敗実例:「相手の保険会社の担当者の態度が高圧的で、電話が来るたびに動悸がする。もう関わりたくなくて、安い金額で示談してしまった」 💡 弁護士の防衛術: ケガの痛みと闘いながら、示談交渉のプロである保険会社と対等に渡り合うのは至難の業です。「被害者なのに、なぜこんなにストレスを抱えなければならないのか」と精神的に追い詰められる方は少なくありません。弁護士が介入した瞬間に、保険会社との窓口はすべて弁護士に一本化され、あなたの平穏な日常が戻ってきます。
交通事故の被害において、「知らなかった」はすべてあなたの経済的・身体的な損失に直結します。
これらを徹底するだけで、交通事故における致命的な失敗の大部分は防ぐことができます。もし現在、保険会社とのやり取りで少しでも違和感や不安を感じているなら、示談書にサインをしてしまう前に、弁護士へ相談してください。一度成立した示談を後から覆すことは、原則として不可能です。