【弁護士が警告】親の介護保険が1円も下りない!?認知症発症で陥る「保険金請求」の落とし穴

記事を書いた人
弁護士町田北斗

【記事執筆・監修】弁護士町田北斗(東京弁護士会)
法的知識(リーガル・リテラシー)が充分でないために、取り返しのつかない失敗する人が多くみてきました。
リーガル・リテラシーを向上させて失敗しない選択をする人を多くするために本メディアを運営中。

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「親は自分で介護保険に入っているから、いざ施設に入ることになっても金銭面は安心だ」 もしあなたがそう思っているなら、非常に危険な状態です。

いざ親が認知症になり、最もお金が必要になったタイミングで「保険金が1円も受け取れない」という悲劇が、実務の現場で頻発しています。

今回は『人生防衛チャンネル』相続・認知症トラブル編として、介護保険金にまつわる痛恨の失敗事例と、それを未然に防ぐための法的な防衛術を解説します。

🚫 【失敗実例】「ご本人様でないと…」保険会社からの非情な宣告

まずは、多くのご家族が直面する恐ろしい失敗ケースを見てみましょう。

▼ 実際のトラブルケース 父親が認知症を発症し、自宅での生活が困難になったため介護施設へ入所することに。毎月の施設代や治療費の足しにするため、子どもであるあなたが「父が加入していた介護保険」を請求しようと保険会社に連絡を入れました。

しかし、オペレーターから返ってきたのは耳を疑う言葉でした。 「申し訳ございません。保険金の請求は『ご本人様から』でないとお受けできません。ご家族の方からの請求はできかねます」

親本人はすでに認知症で、書類の意味も理解できずサインもできません。目の前に親を助けるためのお金があるのに、一切手をつけることができず、結局子どもが自腹を切って高額な施設費用を払い続けることになってしまいました……。

⚖️ なぜ、家族なのに保険金が請求できないのか?(法的解説)

「親のためにお金を使うのだから、家族が代わりに請求して何が悪いのか?」と憤るお気持ちは痛いほどわかります。しかし、法律と契約の世界では、これが通用しません。

「意思能力の喪失」という高すぎる壁

法律上、保険金の請求は立派な「法律行為」です。これを行うには、自分が行う行為の結果を正しく判断できる能力、すなわち「意思能力(いしのうりょく)」が必要不可欠です。

親が認知症を発症し「意思能力がない」とみなされると、たとえ実の子どもであっても、親の財産や権利を勝手に行使することは固く禁じられています。保険会社も法律や約款(ルール)に縛られているため、意思能力のない本人や、法的な代理権を持たない家族からの請求に応じることは、コンプライアンス上絶対にできないのです。

これを無理やり解決しようとすれば、家庭裁判所で「成年後見人」を選任するしかなくなり、多大な時間と費用(毎月の専門家への報酬など)という別の地獄が待っています。

🛡️ 弁護士が教える防衛術:元気なうちに「指定代理請求人」を設定せよ

この悲劇を防ぐための防具は、実はとてもシンプルです。 親にまだ十分な判断能力がある「元気なうち」に、保険会社の「指定代理請求人(していだいりせいきゅうにん)特約」をつけておくことです。

指定代理請求人とは?

被保険者(親)が、認知症や重い病気・ケガなどで「自分で保険金を請求できない特別な事情」がある場合に、あらかじめ指定された家族が、本人の代わりに保険金を請求できる制度です。 ほとんどの生命保険や介護保険で、無料の特約として付加することができます。

【今日からできるアクションプラン】

  1. 親の保険証券を確認する お盆やお正月の帰省時など、親と話せるタイミングで「どんな保険に入っているか」を一緒に確認してください。
  2. 「指定代理請求人」が誰になっているかチェック 空欄になっていたり、すでに亡くなっている親族になっていたりしないか確認します。
  3. 今すぐ保険会社へ連絡し、手続きを行う 親が元気なうちに、必ず子どもや配偶者を代理人として指定する手続きを済ませておきましょう。

💡 まとめ

「認知症になってからでは、あらゆる契約の扉が閉ざされる」 これが法律のシビアな現実です。親を思いやるためにかけられた保険が、ただの紙切れにならないよう、手遅れになる前に必ず「指定代理請求人」の確認・設定を行ってください。その一手間が、将来のあなたと家族の人生を防衛します。