【交通事故の失敗学】「警察は呼ばないで」に絶対応じてはいけない理由!その場での「口約束・示談」が招く悲劇

記事を書いた人
弁護士町田北斗

【記事執筆・監修】弁護士町田北斗(東京弁護士会)
法的知識(リーガル・リテラシー)が充分でないために、取り返しのつかない失敗する人が多くみてきました。
リーガル・リテラシーを向上させて失敗しない選択をする人を多くするために本メディアを運営中。

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事故/アクシデント

人生防衛チャンネルへようこそ。今回は【カテゴリ③:事故/アクシデント】から、交通事故の現場で非常に多くの方が陥ってしまう「初動の致命的な失敗」について解説します。

車を運転していると、駐車場での軽い接触や、信号待ちでのコツンとした追突など、いわゆる「軽微な事故」に遭遇することがあります。相手が平謝りしてきたり、急いでいたりすると、つい温情をかけてしまいたくなるかもしれません。しかし、法的な知識がないままその場の空気に流されると、後々取り返しのつかない事態に発展します。

実務家として絶対に避けていただきたい失敗実例と、その防衛術をご紹介します。

実際にあった恐ろしい失敗ケース

【失敗実例】その場での「連絡先交換のみ」が招いた悲劇

交差点でコツンと軽い追突事故を起こされた。相手はスーツ姿の会社員で、「急いでいるので警察は呼ばないでほしい。修理代はこちらで全額払うので、名刺交換だけで済ませてもらえないか」と懇願された。

本当に少しぶつかっただけだし、自分も急いでいたため、「修理代だけ払ってくれるなら」と連絡先だけを交換してその場で別れた。

しかし数日後、首にむち打ちのような激しい痛みが出現。慌てて相手に電話をかけるも、**「は?事故なんてありましたっけ?証拠はあるんですか?」**と完全にシラを切られ、着信拒否されてしまった…。

なぜ「口約束の示談」は命取りになるのか?

このケースにおける最大の失敗は、「警察を呼ばず、当事者同士の口約束だけで現場を離れてしまったこと」です。ここでは大きく分けて2つの甚大なリスクが発生しています。

1. 「交通事故証明書」が発行されず、保険が使えない

警察を呼んで現場検証を行ってもらわないと、自動車安全運転センターから「交通事故証明書」が発行されません。 この証明書は、保険会社に自賠責保険や任意保険の保険金を請求する際、絶対に必要になる公的な書類です。これがないということは、客観的に「事故があったこと」を証明できず、後から車の修理代や病院の治療費(慰謝料)を請求しようとしても、保険会社は1円も払ってくれません。すべて自腹になってしまいます。

2. 相手が約束を守る保証はどこにもない

その場では「全額払う」と平謝りしていても、後日ディーラーから高額な修理費用の見積もりを見せられた途端、態度を急変させる人は山ほどいます。警察が介入していないため、最悪の場合は実例のように「そんな事故はなかった」と逃げられてしまい、法的に追及することが極めて困難になります。

弁護士が教える人生防衛術

交通事故の被害に遭った際、あなた自身の人生と財産を防衛するための鉄則は以下の通りです。

  • どんなに軽微な事故でも、必ずその場で「110番通報」する 警察への事故報告は、道路交通法第72条1項で定められた運転者の「義務」です。これを怠ると「報告義務違反」として罰則の対象になる可能性すらあります。「警察を呼ばない」という選択肢は最初から存在しないと考えてください。
  • 相手の「急いでいる」「免許に傷がつくから」という泣き落としには絶対に乗らない 相手の個人的な事情と、あなたの法的な権利保護は全く別の問題です。可哀想だと思って温情をかけた結果、あなたが数十万円、数百万円の損害を被る筋合いはありません。
  • その場で「お金(賠償)」の話は一切しない 「修理代だけ払います」といった口約束や、一筆書かせるような行為も無意味になることが多いです。現場では事実確認と警察への連絡のみに徹し、賠償に関する交渉は必ず「後日、保険会社や専門家を交えて」行ってください。

「事故が起きたら、まずは警察を呼ぶ」。 当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、パニック状態の現場では、この基本すら忘れてしまう方が少なくありません。相手に流されず、粛々と公的な手続きを踏むことこそが、最大のトラブル回避術です。